決めるのは、ふたりです
親の口出しが止まらない。結婚式の決定権を、ふたりに戻す
最終更新 2026.08.09約10分出典7件法令5民間2
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式場を決めたら「そんな安いところで」と言われた。ドレスの写真を見せたら「派手すぎる」と返ってきた。招待客のリストに、会ったこともない親の知人が足されていた。
こういう話は、たいてい「親も心配しているんだよ」で片づけられます。それはたぶん本当です。ただ、心配しているかどうかと、決めていいかどうかは、別の話です。
この記事では、口出しを気持ちの問題として扱いません。誰が何を決める立場にいるのか、という配置の問題として扱います。配置がずれているから会話が終わらないのであって、あなたの伝え方が下手だからではありません。
口出しが終わらないのは、決定権の置き場所が決まっていないから
親の言葉には、たいてい2種類が混ざっています。意見と、決定です。
「もう少し駅から近いほうがいいんじゃない」は意見です。聞いても聞かなくてもいい。 「あそこはやめなさい」は決定の言い方です。ここで返事を保留すると、決定権があちら側にあることを認めた形になります。
会話が終わらないのは、この2つを同じ扱いで受けているからです。意見には「そう思う人もいるよね」で返せます。決定の言い方には、決定として返す必要があります。「もう決めました」と。
制度の側は、はっきりしています。婚姻は届出によって効力が生じ、届出に必要なのは当事者ふたりと成年の証人2人以上の署名だけです[2]。憲法24条1項も、婚姻は「両性の合意のみに基いて成立し」と書いています[1]。そして結婚式のやり方を定めた法律は存在しません。式について決められる立場にいるのは、招く側だけです。
会場との契約も同じです。契約者と請求先は、ふたりの名義にできます。誰が費用を出すかと、誰が契約者になるかは、切り離せます。
お金は、決定権を連れてくる
ここが本題です。
ゼクシィ結婚トレンド調査2024(首都圏)では、挙式・披露宴の費用として親・親族からの援助があった人は74.2%、援助総額の平均は168.6万円でした[3]。多数派です。だからこそ、援助と一緒に発言権まで渡ってしまう場面が、いたるところで起きます。
これは、その親が特別に支配的だから起きるわけではありません。お金の出し手が意思決定に関わるのは、どんな場でも起きる構造です。 人格の話にしないほうが早い。構造なら、設計で対処できます。
分かれ目は、使途が決まっているかどうかです。使途の決まっていないお金は、渡したあとも出し手の側に紐が残ります。使途の決まったお金は、渡した時点で終わります。
そして、援助なしで挙げている人が約4分の1いる、ということでもあります[3]。受け取らないという選択も、例外ではありません。親に頼るかどうかの整理は、別の記事にまとめています。
決定権まで渡りやすい受け取り方
- 金額も使い道も決めずに「出してあげる」を受ける
- 見積書や請求書を、親の名義で受け取る
- 会場との打ち合わせに、毎回同席してもらう
- 足りなくなったら、その都度お願いする
お金だけが渡る受け取り方
- 「衣裳代として◯万円」と、使途と金額を先に決める
- 契約者と請求先は、ふたりの名義にする
- 打ち合わせの同席は、来てほしい回だけにする
- 追加は頼まない前提で、規模を先に決める
金額の大小より、使途が決まっているかどうかが効きます。
相談と、決定を分ける
言い方を変えるだけで通る場面は、実際にあります。ポイントは、相談の形で聞かないことです。
「どう思う?」と聞けば、意見が返ってきます。それは当然です。そして聞いておいて聞かないと、今度は「相談したのに」と言われる。だから、決まっていることは相談の形で出しません。
順番はこうなります。
- 1
ふたりで決めきる
選択肢が残っている状態で相談しない。決まってから話に出します
- 2
決定として伝える
「◯◯にしました」。「◯◯にしようと思うんだけど」は相談の形になります
- 3
理由は、ひとつだけ添える
理由を並べるほど、反論できる面が増えます。「ふたりで決めました」で足ります
- 4
意見には、判断を返さない
「そういう考え方もあるね」で受けて、次の話へ。同意も反論もしません
- 5
覆されたら、同じ文を繰り返す
説得しようとしない。「もう決めました」を、言い方を変えずに返します
決めてから伝える。これだけで、会話の性質が変わります。
口で守れないときは、構造のほうを変える
それでも押し切られる場面はあります。そのときは、決定を口で守るのをやめて、書類の側で決着をつけます。
- 会場との契約者を、ふたりの名義にする
- 見積書と請求書の宛先を、ふたりに変える
- 招待状の差出人を、ふたりの名前にする
- 支払いを、ふたりの口座からにする
書類の上で決まっていれば、口頭の議論が続いても実害は減ります。会場に相談すれば、契約名義も請求先も変えられます。理由を説明する必要はありません。
もうひとつ、効くのが接点そのものを減らすことです。準備が長引くほど、口出しの機会は増えます。打ち合わせの回数、決めることの数、関わる人の数。それぞれが接点です。
- 招待人数を減らす。呼ぶ人が減れば、席次にも引出物にも口を出す余地が減ります
- 挙式だけにする。披露宴の進行がなくなれば、演出の議論もなくなります
- フォトウエディングにする。当日の進行がないので、決めることが大幅に減ります
- 式とは別の日に、食事の席だけ設ける。当日を守りながら、顔を立てる形は作れます
規模を小さくするのは、負けたということではありません。式のかたちを選び直すことは、いつでもできます。準備でふたりが消耗しきってしまうより、ずっといい判断です。準備中に喧嘩をした経験がある人はハナユメの調査で66%[4]。しんどさの逃がし方も、別の記事にあります。
招待そのものを外していい。連絡を止める制度もある
ここまでは、関係を続ける前提の話でした。続けない前提の話も書いておきます。
招待しないという判断は、いつでもできます。 招待状を出す前でも、出したあとでも。誰を招くかを決められるのは招く側だけなので、取り消しに許可は要りません。組み替えることになるのは、差出人・席・親族紹介・エスコート・花束贈呈・支払い名義の6か所だけです。具体的な手順は呼ばない式の組み方にまとめました。
暴力やつきまとい、長く続いた虐待が関わる場合は、話の種類が変わります。ここから先は、式の相談ではありません。
住所を知られたくない場合、制度があります。住民基本台帳事務におけるDV等支援措置です。配偶者からの暴力、ストーカー行為等、児童虐待の被害者に加えて、「その他(1)から(3)までに掲げる方に準ずる方」も申出の対象に含まれています[5]。市区町村が支援の必要性を確認すると、相手方からの住民基本台帳の一部の写しの閲覧、住民票(除票を含む)の写し等の交付、戸籍の附票(除票を含む)の写しの交付を制限できます[5]。原則として、まず警察や配偶者暴力相談支援センター、児童相談所などの相談機関に相談し、そのうえで住民票のある市区町村に申出書を出します。期間は結果の連絡日から1年で、終了の1か月前から延長を申し出られます[5]。
緊急ではないけれど相談したい、という段階なら、全国共通の警察相談専用電話「#9110」があります[7]。
ひとつだけ、正確に書いておきます。戸籍謄本は、この支援措置の対象ではありません。 戸籍法10条1項は、戸籍に記載されている者の直系尊属も謄本を請求できると定めていて[6]、結婚して新しい戸籍が編製されたあとも、この請求権は残ります。ただし同じ条文は、市町村長は請求が不当な目的によることが明らかなときは拒める、とも定めています[6]。気になる場合は、本籍地の市区町村に事情を伝えて相談してください。
なぜ、決定権の話が「気持ちの話」にすり替わるのか
この話題の記事は、たいてい伝え方の助言で終わります。感謝を先に伝える。感情的にならない。相手の立場に立つ。どれも間違ってはいませんが、誰が決めるのかという一点には触れません。
理由は単純で、そちらのほうが穏やかに書けるからです。伝え方の問題にすれば、直すのは読者の側になります。決定権の問題にすると、親に「決める立場ではない」と書くことになる。媒体としては、後者を避けたくなります。
避けたくなる事情も、ひとつあります。ゼクシィ結婚トレンド調査2024(首都圏)で親・親族からの援助があった人は74.2%[3]。親は、結婚式の費用の出し手でもあります。 単価を押し上げる側を否定的に扱う記事は、式場紹介で成り立つ媒体からは出てきにくい。
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よくある質問
- 親がお金を出すと言っています。受け取ると口出しされますか?
- 受け取るかどうかより、受け取り方のほうが効きます。金額も使い道も決めずに受け取ると、決定の場面で意見が返ってきやすくなります。「衣裳代として◯万円」のように使途と金額を先に決めて渡してもらえば、渡るのはお金だけです。契約者と請求先をふたりの名義にしておくと、線がさらにはっきりします。
- 「みっともない」「恥ずかしい」と言われます。どう返せばいいですか?
- 説得しようとしないほうが早く終わります。この種の言葉は反論を求めていて、返すほど会話が伸びるからです。「そう思う人もいるよね」で受けて、次の話に移す。決定を問われたら「もう決めました」を、言い方を変えずに繰り返す。理由を足すと、そこから反論できる面が増えます。
- 招待客に、会ったこともない親の知人を入れろと言われました。
- 断って構いません。誰を招くかを決めるのは招く側です。ただ、親が費用を出していると、この要求は通りやすくなります。断りにくいと感じるなら、それは関係ではなくお金の設計から来ています。使途と金額を先に決めた形に切り替えるか、その分を受け取らない選択もできます。人数は、そのまま費用に跳ね返ります。
- 一度決めたことを、何度も覆されます。
- 口頭のやりとりで守ろうとすると、決着がつきません。書類の側で決めてしまうのが確実です。会場との契約者、見積書と請求書の宛先、招待状の差出人、支払いの口座。この4つをふたりの名義にすると、議論が続いても実務は動きません。会場に相談すれば名義は変えられますし、理由を説明する必要もありません。
- 顔合わせをしたくありません。しないとだめですか?
- しなくても構いません。両家顔合わせも結納も、法律にも会場の規則にもない慣習です。婚姻の成立に必要なのは届出だけで、家同士の対面は要件に入っていません[2]。したくない理由を説明する必要もありません。相手方のご家族との関係だけ気になる場合は、ふたりから同じ説明を一度だけ伝えて、それ以上は繰り返さないのが穏やかです。
出典
数字は公開された一次情報から。公的統計・法令の公的解説と、民間調査を区別しています。
- [1]e-Gov法令検索「日本国憲法」第24条第1項(婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し)法令・制度1946
- [2]e-Gov法令検索「民法」(明治29年法律第89号)第739条(婚姻の届出)・第740条(婚姻の届出の受理)法令・制度1896
- [3]ゼクシィ結婚トレンド調査2024 首都圏(リクルートブライダル総研)挙式、披露宴・ウエディングパーティーの費用としての親・親族からの援助有無/援助総額民間調査2024
- [4]ハナユメ「結婚準備中の喧嘩に関するアンケート」(2018年公表)民間調査2018
- [5]総務省「配偶者からの暴力(DV)、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の方は、申出によって、住民票の写し等の交付等を制限できます。」法令・制度2024
- [6]e-Gov法令検索「戸籍法」(昭和22年法律第224号)第10条(戸籍謄本等の交付請求)・第16条(婚姻の届出による新戸籍の編製)法令・制度1947
- [7]警察庁「警察相談専用電話『#9110』」(全国共通の短縮ダイヤル)法令・制度2024
この記事の編集方針
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数字は、厚生労働省の人口動態統計などの公的統計と、公開された民間調査の一次情報に基づく目安です(各ページ末尾に出典を明記しています)。地域・会場・時期によって幅があるので、最後はふたりのペースで読み替えてください。