証明書を出さない国も、めずらしくありません
国籍の違うふたりの婚姻届。婚姻要件具備証明書が出ないとき
最終更新 2026.08.02約13分出典5件法令5
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婚姻届の用紙は、日本人どうしでも国籍が違っても同じ一枚です。けれど、そこに添える書類の量が違います。
日本人どうしなら、その場で受理されて終わります。相手が外国籍だと、まず相手の国が「この人は結婚できる状態です」と証明した書類が要ります。婚姻要件具備証明書と呼ばれるものです。
問題は、この証明書を発行していない国があることです。制度そのものを持たない国もあれば、在日の大使館では扱っていない国もあります。窓口で「取ってきてください」と言われても、取りに行く先が存在しない。
法務省は、その場合の代わりの道筋を示しています。この記事は、どの法律がどこを決めていて、書類が揃わないときに何を組み立てるのかの話です。なお、在留資格(配偶者ビザ)は婚姻とは別の手続きで、出入国在留管理庁が所管しています。この記事では扱いません。
どちらの国の法律で決まるのか
最初に押さえておくと、あとの書類の意味がわかります。国籍の違うふたりの婚姻には、二つの別々の問いがあります。結婚できる条件を満たしているか(成立)と、どういう手続きを踏めば結婚したことになるか(方式)です。決めているのは「法の適用に関する通則法」の第24条で、三つの項に分かれています[1]。
第1項。「婚姻の成立は、各当事者につき、その本国法による」[1]。日本人側は日本の民法で、相手方は相手国の法律で判断します。片方にまとめるのではなく、それぞれ別々に見ます。日本側の条件のひとつが婚姻適齢で、民法第731条は「婚姻は、十八歳にならなければ、することができない」と定めています[2]。相手方の年齢や重婚の禁止といった条件は、相手国の法律が決めます。
第2項。「婚姻の方式は、婚姻挙行地の法による」[1]。日本で挙げるなら日本の方式、つまり戸籍法の届出です。
第3項。方式については当事者の一方の本国法に適合する形も有効とされていますが、ただし書きがあります。「日本において婚姻が挙行された場合において、当事者の一方が日本人であるときは、この限りでない」[1]。日本で、日本人が関わる婚姻をするなら、日本の方式によるということです。
日本の方式は民法が決めています。「婚姻は、戸籍法…の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる」(第739条第1項)[2]。式ではなく、届出で成立します。
そして役所は、条件が満たされていることを確認してからでないと受理できません。民法第740条が、法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ受理できないと定めているためです[2]。婚姻要件具備証明書が求められるのは、この確認のためです。
成立(結婚できる条件)
- 各当事者につき、その本国法による(第1項)
- 日本人側は日本の民法(婚姻適齢は18歳)
- 相手方は相手国の法律
- これを証明するのが婚姻要件具備証明書
方式(何をすれば成立するか)
- 婚姻挙行地の法による(第2項)
- 日本で挙げるなら戸籍法の届出
- 日本人が当事者で日本で挙げるときは、日本の方式による(第3項ただし書き)
- 式を挙げたかどうかは関係しない(民法第739条第1項)
法の適用に関する通則法第24条より。「結婚できるか」と「どうすれば結婚したことになるか」は別々に決まります。
日本の役所に出すとき、何が要るのか
法務省は、外国人が日本で婚姻の届出をする場合について、届書のほかに婚姻要件具備証明書とその日本語訳が必要だと説明しています[4]。
この証明書は、相手方の本国の大使・公使または領事が、本国法上の婚姻の要件を満たしていることを証明するものです[4]。日本にあるその国の大使館や領事館が発行します。日本の役所が出すものではありません。
外国語の書類には日本語の訳文を付け、誰が翻訳したのかを記入します。法務省は翻訳者は本人でもかまわないとしています[4]。翻訳会社に頼まなければならない、というきまりではありません。
方向が逆のときもあります。日本人が外国の方式で婚姻する場合には、日本人の側が「日本法上の婚姻の成立要件を具備していること」を証明する婚姻要件具備証明書を用意します[5]。法務省は、この証明書を(1)日本の在外公館(大使館・領事館)(2)本籍地の市区町村(3)お近くの法務局・地方法務局のいずれかで取得できるとしています[4]。同じ名前の書類が、立場によって出す側と受け取る側を入れ替えます。
どこで取るかで、後の手間が変わります。法務省の表によると、在外公館で取ると外国文で発行され、市区町村と法務局・地方法務局では日本文で発行されます[4]。そして日本文で取った場合、提出先の国によっては、外務省証明班の認証や、提出先の国の駐日大使・領事の認証が必要になります[4]。認証が要るかどうかは国ごとに違うので、提出先の国の在日大使館・領事館に確かめるよう案内されています[4]。書類を取ってから、もうひと工程あるかもしれない、ということです。
日程に効く条件もあります。東京法務局は、「婚姻要件具備証明書の請求及び受領は、不当な請求を防止するため、必ず本人の来庁が必要です」として、代理人による請求も郵送での請求も認めていません[5]。同局は請求から交付まで時間がかかり、翌日以降になる場合もあるとも案内しています[5]。平日の日中を、それも一度で済まないかもしれない前提で確保する必要があるということです。
- 1
相手国の在日大使館・領事館に問い合わせる
婚姻要件具備証明書を発行しているか、発行するなら何が必要か(パスポート・出生証明書・独身であることの資料など)を確かめる。ここが最初の分かれ道になる。
- 2
証明書を取り、日本語訳を付ける
訳文には誰が翻訳したのかを記入する。翻訳者は本人でもよい。原本と訳文をセットで扱う。
- 3
届出先の市区町村に、書類の組み合わせを確認する
国籍証明・出生証明・パスポートの写しなど、追加で求められるものが自治体と相手国で変わる。窓口に一度聞いてから揃えるほうが早い。
- 4
婚姻届を出す
届出は届出事件の本人の本籍地または届出人の所在地で行う(戸籍法第25条)。成年の証人2人の署名が要る点は、日本人どうしと同じ(民法第739条第2項)。
法務省「国際結婚、海外での出生等に関する戸籍Q&A」より。必要書類の細部は市区町村と相手国によって変わるので、届出先の窓口で先に確認してください。
証明書を出さない国だったとき
ここが、この手続きでいちばん人が止まるところです。婚姻要件具備証明書という制度を持たない国は、めずらしくありません。
法務省は、証明書を発行していない国の場合について、代わりに認められる書類を示しています。まず、本国の領事の面前で本人が婚姻の要件を満たしていることを宣誓し、領事が署名した宣誓書です[4]。
宣誓書も用意できない場合には、次のような書類を組み合わせます[4]。
- 本国の法律の写し(婚姻の要件を定めた部分。出典を明記し、日本語訳を添える)
- パスポート、国籍証明書、身分登録簿の写し、出生証明書など(いずれも日本語訳を添える)
つまり、一枚の証明書の代わりに、「相手国の法律はこう定めている」+「この人はその条件を満たしている」を別々の資料で示すという組み立てです。役所が民法第740条の確認をできる材料を揃える、という点では同じことをしています。
この段階になると、必要な書類の組み合わせは相手国と自治体によって変わります。先に窓口で相談して、揃えるものを聞いてから動くのが結局いちばん早い進み方です。「この国の人と結婚したい。婚姻要件具備証明書は出ないようだ」と最初に言えば、その役所が過去に扱った形を教えてもらえることがあります。
外国で式を挙げて、その国の方式で結婚したとき
もうひとつの経路です。相手の国で、その国の方式に従って婚姻を成立させた場合。このときは日本での届出の意味が変わります。すでに成立した婚姻を報告する届出になります。
法務省は、外国の方式で有効に婚姻が成立している場合について、婚姻成立の日から3か月以内に、婚姻に関する証書の謄本(日本語訳を添える)を、日本の在外公館に提出するか、本籍地の市区町村に提出または郵送する必要があると説明しています[4]。根拠は戸籍法第41条で、外国に在る日本人がその国の方式に従って届出事件に関する証書を作らせたときは、3か月以内にその国に駐在する日本の大使・公使または領事に証書の謄本を提出しなければならない、と定めています[3]。
ここで見落とされやすい点があります。法務省は、日本人と外国人の婚姻を、日本の在外公館に届け出ることはできないと明記しています[4]。「大使館で婚姻届を出せばいい」と考えていると、現地で止まります。外国で成立させる場合は、その国の方式で婚姻を成立させたうえで、証書の謄本を提出する形になります。
海外で挙式する予定があるなら、それが「式」なのか「その国の方式による婚姻」なのかを先に区別しておくと混乱が減ります。リゾート地での挙式のように、儀式であって法律上の婚姻ではない形も多くあります。その場合は、日本で別途届け出ることになります。
日本の方式で成立させる(創設的な届出)
- 市区町村に婚姻届を出した時点で成立する
- 相手方の婚姻要件具備証明書と日本語訳が要る
- 証明書が出ない国なら、宣誓書や本国法の写しで代える
- 日本人と外国人の婚姻は、在外公館には届け出られない
外国の方式で成立させる(報告的な届出)
- 相手国の方式で婚姻が成立した時点で成立している
- 日本人側の婚姻要件具備証明書を求められることがある
- 成立の日から3か月以内に証書の謄本を提出する
- 提出先は在外公館、または本籍地の市区町村(郵送可)
法務省「国際結婚、海外での出生等に関する戸籍Q&A」・戸籍法第41条より。どちらの経路をとるかで、用意する書類も期限も変わります。
戸籍はどうなるのか。氏はどうなるのか
届出が受理されたあとの話です。ここも、日本人どうしとは形が違います。
法務省は、日本人が外国人と婚姻した場合、外国人についての戸籍は作られないと説明しています。作られるのは、配偶者である日本人の戸籍に、その外国人(氏名・生年月日・国籍)と婚姻した事実が記載されるという形です[4]。日本人どうしのように、ふたりで一つの戸籍を作るのとは違います。
氏についても、独自の扱いがあります。日本人どうしの婚姻では、届出のときに夫または妻の氏を選びます(戸籍法第74条第1号)[3]。国際結婚では、婚姻によって当然に氏が変わることはありません。
そのうえで、変えたい場合の道があります。戸籍法第107条第2項は、外国人と婚姻をした者がその氏を配偶者の称している氏に変更しようとするときは、婚姻の日から6か月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで届け出ることができると定めています[3]。6か月を過ぎると、家庭裁判所の許可が要ります[4]。
この6か月は、意識していないと過ぎます。 婚姻届のあとには在留資格の手続きや生活の立ち上げが続くので、氏をどうするかは後回しになりやすいところです。変える可能性が少しでもあるなら、婚姻届を出す時点で期限を書き留めておいてください。
なお、いったんこの規定で氏を変えた人が、離婚・婚姻の取消し・配偶者の死亡の日以後にもとの氏に戻す場合は、その日から3か月以内に限り家庭裁判所の許可なしで届け出られます(同条第3項)[3]。
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よくある質問
- 婚姻要件具備証明書は、どこでもらうものですか?
- 相手方のものは、日本にあるその国の大使館・領事館が発行します。本国の大使・公使または領事が、本国法上の婚姻の要件を満たしていることを証明する書類だからです[4]。日本の役所は発行しません。逆に、日本人が外国の方式で婚姻するために日本側の証明が要る場合は、日本の在外公館・本籍地の市区町村・法務局や地方法務局のいずれかで取得します[4]。同じ名前でも、どちら向きの証明かで発行元が変わります。なお法務局で取る場合は、東京法務局の案内によれば代理人請求も郵送請求もできず、本人が窓口に行く必要があります[5]。市区町村や法務局で取ると日本文での発行になるため、提出先の国によっては外務省証明班や駐日大使・領事の認証を別に求められることがあります[4]。
- 相手の国が婚姻要件具備証明書を発行していません。結婚できないのですか?
- できます。法務省は代わりの書類を示していて、まず本国の領事の面前で本人が要件を満たしていることを宣誓し、領事が署名した宣誓書が挙げられています。それも提出できない場合は、本国の法律の写し(出典を明記し日本語訳を添える)、パスポート、国籍証明書、身分登録簿の写し、出生証明書などを組み合わせることになります[4]。何をどう組み合わせるかは相手国と自治体によって変わるので、書類を集める前に届出先の窓口に相談してください。
- 海外の大使館で婚姻届を出せばいいのでは?
- 日本人と外国人の婚姻は、日本の在外公館に届け出ることはできません[4]。外国で成立させるなら、その国の方式で婚姻を成立させたうえで、成立の日から3か月以内に婚姻に関する証書の謄本を在外公館または本籍地の市区町村に提出する形になります[4][3]。リゾート地での挙式のように、儀式であって法律上の婚姻ではない形も多いので、その挙式で法律上の婚姻が成立するのかどうかを先に確かめてください。
- 翻訳は、専門の業者に頼まないといけませんか?
- 法務省は、外国語で書かれた書類には日本語の訳文を付け、誰が翻訳したのかを記入すればよく、翻訳者は本人でもかまわないとしています[4]。ただし、届出先の市区町村が独自に扱いを決めている場合や、書類の種類によって求められる形が違う場合があります。訳し始める前に窓口で一度確認しておくと、やり直しになりません。
- 婚姻届を出したら、私の名字は相手の名字になりますか?
- 自動では変わりません。国際結婚では、婚姻によって当然に氏が変わることはないためです。変えたい場合は、戸籍法第107条第2項により、婚姻の日から6か月以内に限って家庭裁判所の許可なしで届け出られます[3]。6か月を過ぎると家庭裁判所の許可が必要になります[4]。変える可能性があるなら、婚姻届と同じ日に期限をカレンダーに入れておくのが確実です。
- 在留資格(配偶者ビザ)は、婚姻届と一緒に取れますか?
- 別の手続きです。婚姻届は市区町村への戸籍の届出であり、在留資格は出入国在留管理庁が扱う入管手続きです。婚姻が成立していることは在留資格の審査の前提になりますが、婚姻届が受理されたからといって在留資格が変わるわけではありません。要件も必要書類も変わることがあるので、出入国在留管理庁の案内で最新の内容を確認してください。この記事では扱っていません。
出典
数字は公開された一次情報から。公的統計・法令の公的解説と、民間調査を区別しています。
- [1]e-Gov法令検索「法の適用に関する通則法」(平成18年法律第78号)第24条(婚姻の成立及び方式)法令・制度2006
- [2]e-Gov法令検索「民法」(明治29年法律第89号)第731条(婚姻適齢)・第739条(婚姻の届出)・第740条(婚姻の届出の受理)法令・制度1896
- [3]e-Gov法令検索「戸籍法」(昭和22年法律第224号)第25条(届出地)・第41条(外国に在る日本人の証書の謄本の提出)・第74条(婚姻の届出の記載事項)・第107条(氏の変更)法令・制度1947
- [4]法務省「国際結婚、海外での出生等に関する戸籍Q&A」(外国人との婚姻の届出に必要な書類/婚姻要件具備証明書を発行していない国の取扱い/外国の方式で婚姻した場合の証書の提出/日本人の婚姻要件具備証明書の発行機関と認証/婚姻後の戸籍と氏)法令・制度2025
- [5]東京法務局「婚姻要件具備証明書(独身証明書)の交付請求について」(日本人が外国の方式によって婚姻する場合の証明書)法令・制度2025
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