「結婚したら手当が出る」は、半分の会社の話です
配偶者手当は、あるとは限りません。国は廃止しました
最終更新 2026.08.03約14分出典5件公的1法令4
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「結婚したら、会社から手当が出るらしい」。入籍を控えた人が一度は耳にする話です。
半分は、本当です。そして半分は、本当ではありません。
人事院の令和6年職種別民間給与実態調査によると、家族手当の制度がある事業所は74.5%。ただし、配偶者に家族手当を支給する事業所は53.5%です[1]。ざっくり言えば、出る会社と出ない会社が、ほぼ半々。しかも出る会社の9割近くには、配偶者の収入による制限が付いています[1]。
さらに大きな動きがあります。国家公務員の配偶者に係る扶養手当は、廃止されました。 人事院が令和6年8月の勧告で「配偶者に係る手当を廃止。子に係る手当を13,000円に引上げ」と打ち出し[2]、段階的な縮小を経て、令和8年度に廃止が完了しています。
この記事は、「もらえる前提」でも「もらえない前提」でもなく、自分の会社の就業規則で確かめてから設計するための地図です。どこを見るか、何が書いてあるか、そしてこの手当がどこへ向かっているかを、一次資料で見ていきます。
「結婚したら手当が出る」は、半分の会社の話です
まず全体像です。人事院の調査は、従業員数ウエイトで次の数字を示しています[1]。
家族手当制度がある事業所は74.5%。4社に3社は、家族への手当の仕組み自体は持っています。
ところが、配偶者に家族手当を支給する事業所は53.5%。制度がある事業所に限っても、配偶者に支給するのは71.8%です[1]。つまり、家族手当はあるけれど対象は子どもだけで、配偶者には出ないという会社が、はっきり存在します。
この差は偶然ではありません。あとで見るとおり、手当の対象を配偶者から子どもへ移す見直しが、官民の両方で進んでいるからです。
だから「結婚したら手当」という期待は、確率で言えばコイントスに近い賭けです。賭けにしないための方法は一つで、自分の会社の規程を見ること。次のセクションで、どこを見ればいいかを具体的にします。
人事院「令和6年職種別民間給与実態調査」表12より。家族手当制度の有無を回答した事業所の従業員数を100とした割合(従業員数ウエイト)です。[1]
名前がばらばらなので、探し方から
この手当は、会社によって呼び名が違います。家族手当、扶養手当、配偶者手当。ほかに「生活手当」「扶養家族手当」と呼ぶ会社もあります。人事院の民間調査は「家族手当」、国家公務員の制度は「扶養手当」、厚生労働省の資料は「配偶者手当」という言葉を使っていますが、指しているものはおおむね同じ家族です。
探す場所は、就業規則本体ではなく賃金規程(給与規程)の「諸手当」の章であることが多いです。就業規則から賃金の定めが別規程に切り出されている会社が多いためです。社内ポータルで「賃金規程」「給与規程」を探すか、人事・総務に「家族手当の規程を見たい」と伝えれば出てきます。
確かめるポイントは四つです。
- 対象。配偶者が含まれるか、子どもだけか
- 金額。配偶者いくら、子ひとりにつきいくら、と書かれています
- 収入要件。「配偶者の年収が103万円未満の場合」のような線があるか
- 手続き。届出の様式と、支給がいつから始まるか
この四つが分かれば、この記事の残りは答え合わせです。
あっても、配偶者の収入の線があることが多い
配偶者に手当を支給する会社でも、無条件ではありません。
人事院の調査では、配偶者に家族手当を支給する事業所のうち、配偶者の収入による制限がある事業所が88.0%です[1]。ほぼ9割。共働きで配偶者にも一定の収入があると、手当の対象外になる設計が標準ということです。
線の引かれ方も調査に出ています。収入制限がある事業所のうち、制限額103万円が43.4%で最多。130万円が34.4%で続き、150万円が7.4%、その他が14.8%です[1]。
103万円と130万円。この二つの数字に見覚えがあるはずです。103万円はかつての税の配偶者控除の線、130万円は社会保険の被扶養者の線。会社の手当の線は、税と社会保険の「壁」を借りて作られてきたのです。
つまり結婚後の働き方を考えるとき、収入の線は最大で三系統あります。税の線、社会保険の線、そして会社の手当の線。三つは別の制度で、動くタイミングも別です。ここを混ぜると設計を間違えます。次のセクションが、その実例です。
人事院「令和6年職種別民間給与実態調査」表12より。配偶者の収入による制限がある事業所の従業員数を100とした割合です。制限がある事業所自体は、配偶者に支給する事業所の88.0%を占めます。[1]
税の線は動きました。手当の線は、自動では動きません
令和7年分から、税の配偶者控除の線は給与収入123万円以下に引き上げられました[5]。いわゆる「103万円の壁」の103万円は、税の世界ではもう過去の数字です。
ここで実務上の落とし穴があります。会社の手当の規程は、税制改正で自動的には変わらないということです。
規程の書き方は、大きく二通りあります。ひとつは「配偶者の年収が103万円未満」と金額で直接書いてあるタイプ。この場合、税の線が123万円に動いても、規程の103万円は改定されるまでそのままです。もうひとつは「所得税法上の控除対象配偶者であること」のように税制を参照して書いてあるタイプ。こちらは税制が動けば連動して動きます。
同じ「103万円まで」に見えて、根拠が金額直書きなのか税制参照なのかで、これからの挙動が違う。自分の会社の規程がどちらの書き方かは、パートやアルバイトで働き方を調整しようとしている場合、収入計画に直結します。
規程を読んで判別が付かなければ、人事・総務に「配偶者手当の収入要件は、税制改正後の数字で見るのですか」と聞けば一度で解決します。曖昧なまま「たぶん123万円まで大丈夫」と働く時間を増やすのが、いちばん危ない選び方です。
国家公務員の配偶者手当は、もうありません
この手当の行き先を考えるうえで、いちばん大きな事実がこれです。
人事院は令和6年8月の勧告で、扶養手当の見直しをこう打ち出しました。「配偶者に係る手当を廃止。子に係る手当を13,000円に引上げ」。理由は「配偶者の働き方に中立的な制度に向かう社会状況の変化に対応」し、「子を有する職員に対する生計費の補填を充実」するためで、「2年間で段階的に実施」とされました[2]。
実施のスケジュールも勧告資料に明記されています。配偶者に係る手当(行政職俸給表(一)7級以下)は、月6,500円から令和7年度に3,000円へ、そして令和8年度に廃止。子に係る手当は10,000円から11,500円を経て13,000円へ[2]。
そして現在の法律を見ると、一般職の職員の給与に関する法律11条の扶養親族の列挙は、子・孫・満六十歳以上の父母及び祖父母・弟妹・重度心身障害者となっており、配偶者はもう並んでいません[3]。子に係る手当は一人につき月13,000円です[3]。
「配偶者を扶養する人に手当を出す」から、「子どもを育てる人に手当を出す」へ。国は、原資ごと付け替えました。これは公務員の内輪の話ではなく、民間の規程が長年参照してきたお手本が変わったということを意味します。
令和6年度まで
配偶者 月6,500円・子 月10,000円
令和7年度
配偶者 月3,000円に縮小・子 月11,500円に増額
令和8年度
配偶者に係る手当は廃止。子は月13,000円に
人事院「本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み」(令和6年8月)より。配偶者の額は行政職俸給表(一)7級以下の場合。8級は令和7年度に廃止されました。[2]
民間も、見直しの途中です
民間はどうか。人事院の同じ調査に、見直し予定を聞いた項目があります。
配偶者に家族手当を支給する事業所のうち、「見直す予定又は見直すことについて検討中」が15.3%。「税制及び社会保障制度の見直しの動向、他の民間企業の見直しの動向、公務員の見直しの動向等によっては、見直すことを検討」が11.1%。「見直す予定はない(検討も行っていない)」は73.6%です[1]。
見直し予定・検討中の事業所の内訳を見ると、「手当を廃止」が31.4%、「手当額の減額」が9.4%、「手当額の増額」は3.9%、未定が49.6%[1]。方向が決まっているところでは、廃止が増額の8倍です。
「動向によっては検討」の11.1%が条件にしている「公務員の見直しの動向」は、前のセクションで見たとおり、もう確定しました。この調査は国の廃止スケジュールが動き出す前の時点のものなので、これから数年の見直しは、この数字より進む方向に読むのが自然です。
いま手当をもらえている(もらえる予定の)人にとって、これは「明日なくなる」という話ではありません。労使の手続きを経て、経過措置を置いて変わっていくのが普通です。ただ、10年単位の家計設計に月1万円前後の手当を固定値として組み込むのは、前提として弱い。それだけは数字が示しています。
人事院「令和6年職種別民間給与実態調査」表12より。配偶者に家族手当を支給する事業所の従業員数を100とした割合です。見直し予定・検討中の内訳では「手当を廃止」が31.4%で最多でした。[1]
なぜ、配偶者手当は縮んでいくのか
理由は、はっきり言語化されています。
厚生労働省は、企業向けのページでこう書いています。「パートタイム労働で働く配偶者の就業調整につながる配偶者手当(配偶者の収入要件がある配偶者手当)については、配偶者の働き方に中立的な制度となるよう見直しを進める事が望まれています。」[4]
「就業調整」とは、手当や社会保険の線を超えないように、働く時間をあえて抑えることです。年収103万円の線で手当が月1万円強消えるなら、年間の手取りで見て「働き損」の帯が生まれ、線の手前で勤務を止める動機になります。人手不足の中で、この構造が働く側と雇う側の双方の足かせになっている——というのが見直し論の背景です。
人事院の勧告理由も同じ言葉を使っています。「配偶者の働き方に中立的な制度に向かう社会状況の変化に対応」[2]。配偶者がどれだけ働いても損得が変わらない制度へ、という方向は、税・社会保険・手当の三系統で共通の潮流です。
ここまでが構造の話です。ふたりの家計にとっての含意はシンプルで、「手当をもらうために収入を抑える」型の最適化は、前提の制度ごと動いているということ。最適化するなら、動きにくいもの(ふたりの稼ぐ力)を軸にするほうが、長い目では堅い設計になります。
手当は、届け出てはじめて出ます
ここまでで「あるか・いくらか・続くか」を見ました。最後は実務です。この手当は、会社が自動的に付けてくれるものではありません。
多くの会社では、結婚したことを届け出る書類(身上異動届、家族異動届など呼び名はさまざま)を出し、配偶者の収入を確認できる書類を添えて、はじめて支給が始まります。国家公務員の扶養手当も「扶養親族のある職員に対して支給する」制度として届出を前提に運用されてきました。民間の規程も同じ構造が一般的です。
気を付けたいのは支給開始のタイミングです。「届出の翌月から支給」と書かれている規程では、届出が遅れた月の分をさかのぼって払うかどうかは規程次第です。入籍から半年たって「そういえば手当」と気付いた場合、その半年分が出ないことは普通にありえます。
入籍後の会社への届出は、手当だけの話ではありません。健康保険の手続き、氏名変更、通勤経路の変更、緊急連絡先。どのみち一度は人事・総務とやり取りするので、そのときに「家族手当(扶養手当)の対象になりますか。手続きは何が要りますか」と一言添えるのが、いちばん漏れのないやり方です。
なお、配偶者を健康保険の被扶養者にする手続きと、会社の手当の収入要件は別の制度です。似た書類を出すので混ざりやすいのですが、社会保険の130万円の話は別記事(結婚して扶養に入る)で整理しています。
手当を前提にしない、という設計
まとめ方を少し変えます。この記事で確かめてきたのは、実は一つの問いです。「配偶者手当は、家計の固定収入として数えていいか。」
数字はこう答えています。そもそも出る会社が53.5%[1]。出ても9割近くに収入の線があり[1]、線の位置は会社ごとに違い、税制と自動連動するとは限らない。国は廃止を完了し[2]、民間も廃止方向の見直しが先行している[1]。
だから設計の順番はこうなります。まず、[就業規則](/guide/kekkon-kyuka-shugyokisoku)(賃金規程)で事実を確かめる。あるなら、金額と収入要件と手続きをメモして、届出を入籍後の手続きリストに入れる。そして家計の計画では、手当は「もらえている間のプラス」として扱い、10年先の前提にはしない。
もらえるものを取りこぼさず、なくなっても壊れない。地味ですが、これが手当とのいちばん健全な付き合い方です。
そして働き方そのものの損得——税の123万円、社会保険の130万円、その先の選択——は、手当より大きな話として別に設計する価値があります。そちらは関連記事に譲ります。この記事の宿題は一つだけ。賃金規程の「諸手当」の章を、今週どこかで1ページ読む。 それで終わりです。
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よくある質問
- 配偶者手当は、いくらぐらいもらえるものですか。
- 会社によって違い、自分の会社の賃金規程でしか確定しません。目安として、廃止前の国家公務員の配偶者に係る扶養手当は月6,500円でした。民間では規程に金額が明記されているので、賃金規程の諸手当の章を確認してください。なお金額の大小より先に、そもそも配偶者が対象か(子どものみの会社もあります)と、収入要件の有無を見るほうが実務的です。
- 共働きです。手当は出ますか。
- 配偶者の収入次第です。配偶者に家族手当を支給する事業所の88.0%には配偶者の収入による制限があり、最多の線は103万円、次いで130万円です(人事院・令和6年職種別民間給与実態調査)。フルタイムの共働きでは対象外になることが多い設計です。逆に言えば、制限がない事業所も12.0%あるので、思い込みで諦めずに規程を確認してください。
- 会社の規程が「103万円未満」のままです。税の壁は123万円になったのでは。
- 税の配偶者控除の線は令和7年分から給与収入123万円以下に上がりましたが、会社の手当の規程は税制改正で自動的には変わりません。規程が「103万円」と金額で書いてあれば、改定されるまで103万円のままです。「所得税法上の控除対象配偶者」のように税制を参照する書き方なら連動します。どちらの書き方かで収入計画が変わるので、人事・総務に確認するのが確実です。
- 入籍したら自動的に支給されますか。
- されません。身上異動届などの届出と、配偶者の収入を確認する書類の提出を経て支給が始まるのが一般的です。支給開始が「届出の翌月から」とされている規程では、届出が遅れた分がさかのぼって支払われないこともあります。入籍後は健康保険や氏名変更でどのみち人事・総務に連絡するので、そのときに手当の手続きも一緒に確認してください。
- 公務員です。配偶者の扶養手当はもらえますか。
- 国家公務員の配偶者に係る扶養手当は、令和6年の人事院勧告に基づき段階的に縮小され、令和8年度に廃止されました。現在の給与法の扶養親族に配偶者は含まれておらず、子に係る手当(月13,000円)などに再編されています。地方公務員は各自治体の条例で定まり、国に準じた見直しが進んでいますが時期は自治体ごとに違うので、所属の給与担当に確認してください。
- 会社が配偶者手当を廃止すると言い出したら、損するだけですか。
- 設計によります。国家公務員の見直しは、配偶者分の廃止と同時に子に係る手当を10,000円から13,000円へ引き上げる「付け替え」でした。民間の見直しでも、基本給や子どもへの手当への振り替え、経過措置が置かれることは珍しくありません。廃止の提案が出たら、何に振り替わるのか、経過措置はあるのかを労使の場で確認するのが筋です。
出典
数字は公開された一次情報から。公的統計・法令の公的解説と、民間調査を区別しています。
- [1]人事院「令和6年職種別民間給与実態調査」表12 家族手当の支給状況公的統計2024年
- [2]人事院「本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み」(令和6年8月)扶養手当の見直し法令・制度2024年
- [3]一般職の職員の給与に関する法律 第11条(扶養手当)/e-Gov法令検索法令・制度昭和25年法律第95号
- [4]厚生労働省「企業の配偶者手当の在り方の検討」法令・制度2026年
- [5]国税庁タックスアンサーNo.1191「配偶者控除」法令・制度2025年
この記事の編集方針
このガイドは、結婚式の準備をまるごと手伝う無料アプリ「Harebiyori」が書いています。送客手数料や広告費で、記事のおすすめ・順位を動かすことはありません。だから費用も段取りも、どこかへ誘導することなく、ふたりの側に立って書けます。
数字は、厚生労働省の人口動態統計などの公的統計と、公開された民間調査の一次情報に基づく目安です(各ページ末尾に出典を明記しています)。地域・会場・時期によって幅があるので、最後はふたりのペースで読み替えてください。