台本は、覚えなくていい
顔合わせの挨拶と進行で、覚えることは「順番」だけ
最終更新 2026.07.26約13分出典4件民間4
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両家顔合わせでいちばんこわいのは、たいてい費用でも会場でもなく「その場で何を言えばいいか分からない」ことです。挨拶の例文を探して丸暗記しようとして、かえって緊張が増す。よくある話だと思います。
このページが扱うのは、顔合わせの当日に交わされる「ことば」だけです。段取りや費用ではなく、誰が口を開くのか、どの順で話すのか、どこで区切るのか。台本を覚えなくていい理由を、順番のほうから説明します。
緊張して当たり前の場です
顔合わせは、結婚準備のなかでかなり早い時期にやってきます。ある調査では、両家の顔合わせを行った時期は挙式の平均9.5か月前と報告されています[1]。多くのふたりにとって、これは両家がそろう最初の日です。
しかも、状況がかなり特殊です。初対面の大人が、これから家族になるという前提で、同じ食卓につく。日常にこんな場面はほとんどありません。緊張するのはあなたの準備不足ではなく、場のほうがめずらしいからです。
そして、緊張しているのはたぶんあなただけではありません。前の晩から言うことを考えている親は、思っているより多いものです。
ふたりが心配していること
- 何を話せばいいか分からない
- 沈黙になったらどうしよう
- 両家の空気が合わなかったら
- 自分の親が余計なことを言わないか
親のほうも心配していること
- 服装や手土産が、これで合っているか
- 相手の家に失礼にならないか
- 何をどこまで聞いていいのか
- 自分ばかり話しすぎないか
どちらも「相手に失礼がないように」で固くなっている。だから最初のひと言が軽いほど、場はほどけます。
「正式なやり方」は、もう例外です
挨拶を検索すると、「正式には」「本来は」という言葉によく出会います。読むほど、自分たちのやり方が間違っている気がしてきます。
でも数字を見ると、その「正式」のほうが少数派です。調査では、結納を行った人は7.0%(結納と顔合わせの両方が5.3%、結納のみが1.7%)。85.6%は、顔合わせだけを行っています[3]。どちらも行わなかった人も6.8%います。
つまり、儀礼の作法として受け継がれてきた型は、いま行われている会のほとんどには当てはまりません。あなたが探している「正しい挨拶文」は、9割方の人がやっていない儀式のための文章かもしれない、ということです。
それに、この数字は住んでいる場所でかなり変わります。結納を行った人の割合は、青森・秋田・岩手で16.5%、九州で15.2%、首都圏では4.8%[3]。地域によって3倍以上の開きがあります。
- 親世代が「うちのほうでは」と言うとき、その感覚は地域の実態と合っていることが多い
- 逆に、ネットの「一般的なマナー」はどこの話なのか書かれていないことがほとんど
- 両家の出身地が違うなら、先に「どちらの型でいくか」だけ決めておくと、当日ぶつかりません
ゼクシィ結婚トレンド調査2024の全国推計値(単一回答)。結納を行った人は「両方行った」5.3%+「結納のみ行った」1.7%=7.0%。残りは無回答0.6%。棒の長さは項目間の比較用。[3]
決めるのは、台本ではなく3つ
当日までに決めておくと楽になるのは、次の3つだけです。文章ではなく、順番と長さの取り決めだと考えてください。
- 誰が口火を切るか。はじまりの挨拶をする人を、ひとりだけ決める
- どの順で話すか。両家の紹介を、どちらの家から始めるか決める
- どこで区切るか。乾杯・食事・結びの挨拶を、だいたい何時ごろにするか決める
この3つが決まっていれば、あとはその場の言葉で足ります。逆に、決まらないまま当日を迎えると「誰かが始めてくれるのを全員が待つ」という、いちばん気まずい時間が生まれます。
- 1
① 口火を切る人を決める
はじまりの挨拶をする人をひとりだけ。ふたりでも、どちらかの親でもかまわない。
- 2
② 紹介の順を決める
どちらの家から紹介するかだけ先に決める。慣習では男性側からが多いが、決まりではない。
- 3
③ 区切りの時刻を決める
乾杯・食事・結びのだいたいの時刻。お店に伝えておくと、料理の出し方も合わせてもらえる。
文章を決めるのではなく、順番と長さを決める。
場所が、進行の半分を決めます
どこで開くかは、味や予算の話だと思われがちですが、実際には当日のことばの流れを決めるのは会場です。
実施会場を見ると、料亭が47.5%、レストランが25.5%、ホテルが15.0%。どちらかの家で行った人は合わせて4.1%しかいません[4]。つまり大半の会は、コース料理が順番に運ばれてくる場所で行われています。
これは進行にとって朗報です。料理が運ばれてくるたびに会話が自然に区切られるので、進行役が話題を切り替える必要がありません。「では次に」と言わなくても、次の皿が言ってくれます。
会場ごとに、気をつける点だけ違います。
- 料亭・レストランは、個室かどうかを確認する。個室でないと、声を張ることになって全員が疲れます
- ホテルは館内が広いので、集合場所を「◯階のロビー」まで決めておく。当日ここでいちばん迷います
- どちらかの家は、料理の区切りがないぶん、進行役の役割が大きくなる。写真や飲み物の用意を「動く口実」に使えます
そしてどの会場でも、予約のときに「両家の顔合わせです」と伝えておくと効きます。席の配置や料理を出すタイミングを合わせてもらえることが多く、それだけで進行の負担がひとつ減ります。
ゼクシィ結婚トレンド調査2024の全国推計値(顔合わせ実施者・単一回答)。「どちらかの家」は夫の家1.2%と妻の家2.9%の合算。残りは無回答1.1%。棒の長さは項目間の比較用。[4]
はじまりの挨拶は、30秒で足ります
はじまりの挨拶に必要な要素は3つだけです。集まってくれたお礼、今日の会の趣旨、そして「どうぞくつろいでください」の一言。これで30秒です。
長い挨拶は、場をあたためるどころか固くします。全員が着席して料理を待っている状態で3分話されると、次に何か言う人のハードルが上がってしまうからです。
たとえば、ふたりが言う場合。
「本日はお集まりいただき、ありがとうございます。結婚式のことはまだ何も決まっていませんが、その前に両家で一度ゆっくりお話ししたくて、この会を用意しました。堅苦しくならないよう、気楽にお過ごしいただけたらうれしいです。」
どちらかの親が言う場合も、長さは同じでかまいません。
「本日はお忙しいところ、ありがとうございます。ふたりのこれからを、両家で見守っていければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。」
言い回しは、そのまま使っても、全部書き換えてもかまいません。この挨拶で本当に伝わるのは内容ではなく、「この場を始めていいですよ」という合図のほうだからです。
両家の紹介で決めておくのは、順番だけ
自己紹介でつまずくのは、内容ではなく順番です。誰から始めるかが決まっていないと、全員が譲り合って止まります。
慣習としては男性側の家から紹介することが多いのですが、決まりではありません。会場から遠いほうの家から、年長者のいる家から、といった決め方でも問題ありません。どう決めたかより、決まっていることのほうが効きます。
紹介は、二段構えにすると格段に楽になります。まずふたりが自分の家族を紹介し、そのあと本人が一言そえる。いきなり「では自己紹介を」と振られるより、はるかに話しやすくなります。
一人あたりの持ち時間は1分もいりません。名前、ふたりとの関係、それに趣味か仕事をひとつ。全部話そうとすると、聞くほうも覚えきれません。
- 1
ふたりが家族を紹介する
「父です。休みの日はいつも釣りに行っています」。本人の代わりに、ふたりが先に一言そえる。
- 2
本人が一言そえる
紹介されたあとに、ひとことだけ。挨拶と、話題をひとつ。それで十分に伝わる。
- 3
ふたりが次の人へ渡す
「では次に、母を紹介します」とふたりが受け取ると、途切れずに回っていく。
本人にいきなり振らない。ふたりが先に橋をかけてから渡す。
沈黙が来ても、埋めなくていい
顔合わせでもっとも恐れられているのは沈黙です。でも、沈黙は失敗ではありません。初対面の人が6人も8人もいれば、話が途切れる瞬間は必ずあります。
大事なのは、埋めることではなく、逃げ道を先に用意しておくことです。逃げ道は「話題の置き場所」をひとつ作っておくだけで用意できます。ふたりの写真、住む予定の街の地図、当日の流れを書いた一枚。手元に見るものがあると、視線がそこに集まり、会話はそこから再開します。
- 料理が運ばれてくるタイミングは、そのまま話題の切り替え点になります
- 全員が同じものを見る時間があると、沈黙は「間」に変わります
- 途切れたら、ふたりが次の人に話を振る。進行役の仕事は、実質これだけです
避けたほうがいい話題もあります。政治や宗教、健康や病気の詳しい話、過去の交際、そして具体的すぎるお金の話。ただ、これは禁止事項として覚えるより「先に用意した話題で埋める」ほうが実用的です。話すことがあれば、話さないほうの話題は出てきません。
つまずくのは、たいてい同じ3か所
顔合わせで気まずくなるとき、原因は挨拶の出来ではありません。ほとんどが、次の3つのどれかです。しかもどれも、当日ではなく前日までに一言決めておけば消えます。
① 片方の親が仕切ってしまう。悪気はなく、沈黙を埋めようとしているだけのことが多いのですが、もう一方の家は「口を挟めない」と感じます。防ぎ方は、ふたりが進行役を引き受けると先に宣言しておくこと。「当日は私たちが進めるね」の一言で、親は安心して客席にいられます。
② 片方の家だけがよく話す。人数や性格の差で起こります。ふたりが「お父さん、釣りの話をしてもらっていいですか」と名指しで振るだけで戻ります。話を振られない側は、遠慮しているだけであることがほとんどです。
③ その場で[式の日取り](/guide/kekkonshiki-hiduke-rokuyou)や費用を決めようとする。これがいちばん場を固くします。両家が初めて会う日に、答えの出ない相談を始めてしまう。「今日は決めない」と先に決めておくと、話題として出ても「それはまた相談させてください」で流せます。
この3つに共通しているのは、当日の話術ではなく事前の一言で消えるということです。逆に言えば、当日その場でうまく対処しようとするから難しくなります。
起きがちなこと
- 片方の親が仕切ってしまう
- 片方の家だけがよく話す
- その場で日取りや費用を決めようとする
- 誰が払うかを、締めの前に相談し始める
前日までの一言で消えること
- 「当日は私たちが進めるね」と親に伝えておく
- 話を振る相手と話題を、ふたりで決めておく
- 「今日は決めない」をふたりの合意にしておく
- 支払いの方法とタイミングを先に決めておく
右側は、前日までにふたりが交わす一言で足ります。当日の話術で解決しようとしないほうが楽です。
結びの挨拶だけは、ふたりから
結びの挨拶は、できればふたりからをおすすめします。はじまりを親に任せた場合でも、締めをふたりが引き受けると、この会がふたりの会だったことが自然に伝わります。
内容は短くて大丈夫です。来てくれたお礼と、これからのことを一言。「今日はありがとうございました。これから準備を進めていきますので、また相談させてください」。それで足ります。
もうひとつ、事前に決めておきたいのが会計です。誰がどう払うかを当日その場で相談し始めると、せっかくの締めの空気が崩れます。支払いを済ませるタイミングまで——たとえば結びの挨拶の前に、ふたりのどちらかがそっと席を外す——決めておくと、最後まで穏やかに終われます。
決め方に正解はありません。ふたりが持つ、両家で折半する、親が出すと申し出る。どれも実際にあります。ただ、当日その場で譲り合いが始まる形だけは避けるのがいいと思います。親が「ここは私たちが」と言い出す可能性が高いなら、それも含めてどう受けるかを先に話しておくと、断りも受け取りも角が立ちません。
もし当日、予定と違う形で親が支払ってくれたなら、その場で押し返さず、後日あらためてお礼を伝えるほうが穏やかに収まります。
進行役は、誰がやってもいい
顔合わせに司会は要りません。マイクも、式次第を読み上げる人も要りません。
それでも進行役がいたほうが場は動きます。といっても、やることは限られています。始まりを告げる、紹介を次の人へ回す、そろそろ締めましょうと言う。この3つだけです。
ふたりが担ってもいいし、どちらかの親でもかまいません。「進行役」という言葉が重いなら、「時計を見る係」と考えてください。実際、その日の役割はほとんどそれです。
ちなみに、顔合わせを行う時期にも決まった正解はありません。挙式の13か月以上前に行った人が18.5%いる一方で、式の1か月前以内という人も3.1%います[2]。みんなが守っている正しいタイミングがないのと同じように、正しい挨拶文もありません。
一枚あると、覚えることが減る
ここまで書いてきたことは、実は一枚の紙にまとまります。
当日の流れ(何時に何をするか)と、両家のプロフィール(名前、ふたりとの関係、趣味や好きなもの)を書いた「顔合わせしおり」です。
しおりがあると、進行役は次に何をするか思い出せます。紹介される側は、自分の番が来る前に心の準備ができます。そして沈黙が来たとき、全員が同じものを見られます。覚える台本の代わりに、めくれる紙があればいい。それが、私たちがしおりをつくっている理由です。
置いてあるだけで、読み上げなくてもかまいません。手元にあることのほうが効きます。
ただ、正直に書いておきます。しおりは無くても顔合わせは成立します。 私たちはこれを作っている側なので言いにくいのですが、当日いちばん効くのは紙ではなく、「はじまりの挨拶をする人がひとり決まっている」ことのほうです。手書きのメモ1枚でも、同じ働きをします。順番さえ決まっているなら、何も用意せずに行っても大丈夫です。
当日の流れと両家のプロフィールを一枚に。進行表と自己紹介を、同時に済ませられます。
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よくある質問
- 挨拶は誰がするものですか?
- 決まりはありません。ふたりが会を主催する場合はふたりが、親が主催する場合はどちらかの親が行う形が見られます。大事なのは、当日までに「この人がはじまりの挨拶をする」とひとりに決めておくことです。決まっていないと、全員が譲り合って会が始まりません。
- 台本は作ったほうがいいですか?
- 一字一句の台本は要りません。決めておくとよいのは、はじまりの挨拶をする人、両家の紹介の順番、乾杯と結びのだいたいの時刻の3つです。文章ではなく順番を決めておくと、あとはその場の言葉で話せます。
- 会話が途切れるのが不安です。
- 沈黙は失敗ではなく、初対面の会では必ず起こります。埋めようとするより、写真や当日の流れを書いた一枚など、全員が同じものを見られる「話題の置き場所」をひとつ用意しておくと、そこから自然に再開できます。
- 乾杯の音頭は誰が取りますか?
- 両家の年長者にお願いする形が多いものの、決まりはありません。ふたりが「では乾杯しましょう」と言うだけでも成立します。誰に頼むかを事前に伝えておけば、当日その人が慌てずに済みます。
出典
数字は公開された一次情報から。公的統計・法令の公的解説と、民間調査を区別しています。
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数字は、厚生労働省の人口動態統計などの公的統計と、公開された民間調査の一次情報に基づく目安です(各ページ末尾に出典を明記しています)。地域・会場・時期によって幅があるので、最後はふたりのペースで読み替えてください。