相場という、ひとつの数字はない
婚約指輪・結婚指輪の相場を、「給料3ヶ月分」から離れて見る
最終更新 2026.07.26約10分出典17件公的1民間16
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ショーケースの前で、店員さんがすっと差し出した指輪の値札を見て、ふたりで顔を見合わせたこと、ありませんか。「婚約指輪は給料3ヶ月分」という言葉を、どこかで聞いたことがある人も多いと思います。世代を超えて語り継がれてきた、少し重たい基準です。
この記事は、その基準を「気にしなくていいですよ」と慰めて終わりにはしません。実際の給料の統計を持ってきて、3ヶ月分がいくらになるかを計算します。そのうえで、調査に出てくる実際の購入額と並べます。数字どうしを突き合わせれば、基準に従うべきかどうかは、自分で判断できるからです。
このページでは、婚約指輪・結婚指輪に実際いくらかけているか、どう選んでいるかを、特定の宝飾店へ誘導して稼がない Harebiyori が数字でまとめます。
「給料3ヶ月分」を、実際の給料で計算してみる
まず、この基準が金額としていくらになるのかを出しておきましょう。
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査によると、25〜29歳男性の所定内給与額は月27.47万円です[1]。所定内給与額とは、残業手当や深夜手当を除いた、税金を引く前の月給のこと。ここを3倍すると、約82万円になります。
いっぽう、婚約指輪にかかった金額の平均は、首都圏で43.2万円、全国推計で39.0万円[7]。「給料3ヶ月分」は、実際に選ばれている金額のおよそ2倍です。
しかも、この82万円は控えめな計算です。所定内給与額に賞与は入っていませんし、ひとつ上の年齢層(30〜34歳男性)で計算すれば月31.63万円、3ヶ月分は約95万円になります[1]。43.2万円のほうも、賃金の高い首都圏の数字です。どこを動かしても、基準のほうが高いという向きは変わりません。
この差は、どちらかが間違っているという話ではありません。基準のほうが、実際の買い物とずれているという、それだけの事実です。ずれていると分かっていれば、値札を見て「足りていない」と感じる必要はなくなります。
「給料3ヶ月分」は賃金構造基本統計調査(令和6年)の25〜29歳男性の所定内給与額 月27.47万円を3倍した参考値。婚約指輪の額は婚約記念品があった人のうち金額回答者の平均で、地域・素材・オーダー方法によって幅がある。[7]
そもそも、どれくらいの人が指輪を用意しているのか
金額の前に、有無のほうを見ておきます。ここも思っているより幅があります。
2024年4月から2025年3月に結婚した全国20〜49歳への調査では、「婚約指輪をわたす/もらう」を実施した人は55.9%でした[2]。2組に1組強、という水準です。同じ調査で挙式を実施した人は48.9%なので、婚約指輪のほうがやや多い、という並びになります。
結婚指輪はどうか。同じ調査で、結婚指輪を新たに購入・リフォーム・手作りのいずれかで用意した人は約86%。裏返すと、いずれも用意しなかった人が夫側で14.2%、妻側で14.4%います[3]。
ここで、数字の食い違いに見えるものを先にほどいておきます。首都圏で挙式した人に絞った調査では、結婚指輪を購入した人は97.8%とほぼ全員です[10]。86%と97.8%は矛盾していません。聞いている相手が違うだけです。式を挙げた人はほとんど全員が指輪を持っていて、結婚した人全体で見ると7人に1人は持っていない。どちらも本当のことです。
自分がどちらの集団に近いかで、読むべき数字は変わります。
結婚した人 全体(全国)
- 用意した 約86%
- いずれも用意しなかった 約14%
- 式をしなかった人も含む数字
首都圏で挙式した人
- 購入した 97.8%
- ほぼ全員が持っている
- 式を挙げた人だけの数字
母集団の違い。どちらかが正しいのではなく、比べる相手が違う。
婚約指輪に、実際いくらかけているか
婚約に際して何らかの記念品があった人は、首都圏で73.4%、全国推計で71.8%[5]。記念品があった人のうち、それが婚約指輪だった人は82.7%です[6]。
金額の平均は、さきほど見たとおり首都圏43.2万円・全国推計39.0万円[7]。ただ、平均という一つの数字だけを持ち帰らないでください。実際の分布は10万円台から50万円以上まで広がっていて、平均の前後に人が集まっているわけではありません。
これは相場記事全般に言えることです。平均は、高いほうに引っぱられます。数人の高額な買い物が平均を押し上げると、真ん中あたりで買っている多くの人が「平均より下」に見えてしまう。見るべきなのは平均そのものではなく、幅のどこに自分たちが収まるかのほうです。
既製品を選ぶ人が、実は多数派
「婚約指輪はフルオーダーで」というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、実際に婚約指輪を購入した人のうち、既製品を選んだ人は59.5%[8]。セミオーダーが28.9%、フルオーダーは9.5%です。
結婚指輪も同じ傾向で、既製品が59.6%[11]。二人そろって既製品、という選び方が、むしろ一般的な選択肢のひとつです。ダイヤモンドの指輪を選んだ人の中でも、定番の「ソリティア(一粒石)」が43.0%と最多[9]。特別なデザインを一から考えなければ「らしくない」ということもありません。
既製品でも、刻印の言葉やサイズの調整で二人らしさは出せます。「一からつくること」と「二人らしいこと」は、同じ意味ではありません。
既製品と回答した人が最多。フルオーダーでなくても、購入者の多数派に入る選び方。[8]
結婚指輪は、二人分でこのくらい
結婚指輪の金額は、二人分の合計で首都圏平均31.6万円、全国推計29.7万円[12]。内訳を見ると、夫用が平均14.6万円、妻用が平均17.0万円で、妻用のほうがやや高めの傾向です[12]。全国の既婚者に聞いた別の調査では、二人分のセット価格の平均は32.1万円でした[4]。
このセット価格は、分布まで見ると平均の読み方が変わります。20万〜25万円未満が19.4%、30万〜35万円未満が17.1%で山があり、いっぽう50万円以上も18.9%います[4]。平均32.1万円は、この上のほうに引っぱられた結果です。20万円台で買っている人は「平均より安い」のではなく、いちばん人が多い帯にいるだけです。
決める人にも特徴があります。婚約指輪は「夫が決めた」が47.1%と最も多いのに対し、結婚指輪は「二人で決めた」が90.9%[13][14]。婚約指輪はサプライズ性を残しつつ、結婚指輪は二人で相談して選ぶ。そんな役割分担が、データにもあらわれています。
婚約指輪(購入した人)
- 夫が決めた 47.1%
- 二人で決めた 35.1%
- 妻が決めた 17.4%
結婚指輪(購入した人)
- 二人で決めた 90.9%
- 妻が決めた 6.4%
- 夫が決めた 2.0%
婚約指輪は夫が主導することも多く、結婚指輪はほぼ「二人で」決まる傾向。どちらが正解というより、二人の関係性に合わせていい。
決めるのに、何ヶ月もかけていない
「じっくり比べなきゃ」というプレッシャーもあるかもしれませんが、実際の検討行動を見ると、そこまで大がかりではありません。
婚約指輪を購入した人が検討した店舗数は、平均2.8店舗[15]。検討を始めてから決定するまでの期間は、平均1.5ヶ月です[15]。結婚指輪はさらに短く、検討期間は平均1.3ヶ月[16]。
何十件も店舗を回り、何ヶ月も悩み抜かなければいけないわけではありません。二人が「これでいい」と思えた時点が、決めどきです。
- 1
検討した店舗数は、平均2.8店舗
婚約指輪を購入した人の平均(首都圏)。
- 2
検討期間は、平均1.5ヶ月
婚約指輪の検討開始から決定までの期間(首都圏・挙式実施者)。
- 3
結婚指輪はさらに短く、平均1.3ヶ月
二人で選ぶ工程が多いぶん、決定までのスピードも早い傾向(首都圏・挙式実施者)。
なぜ「相場」が独り歩きするのか
「給料3ヶ月分」がどこで生まれた言葉なのか、私たちは一次資料で確認できていません。だから出どころは断定しません。断定しないまま言えることが、ひとつだけあります。
高い基準が広まって得をするのは、指輪を売る側です。 基準が82万円に見えていれば、40万円台の指輪は「控えめな買い物」に見えます。基準がなければ、40万円台はただの40万円台です。基準は、値札の見え方を変えます。
多くの結婚情報メディアや宝飾ブランドの広告は、この基準と相性がよい関係にあります。「既製品で十分」「二人で決めた金額でいい」と正直に書くことは、広告の狙いとは逆を向きやすい。だから、幅のある実態よりも、わかりやすい一律の基準のほうが前面に出やすいのです。
私たちは特定の宝飾店へ誘導して稼ぐことがなく、広告出稿によっておすすめを変えることもありません。だから、賃金統計を持ってきて基準を割り算する、という無粋なこともできます。
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よくある質問
- 「給料3ヶ月分」は、今でも目安になりますか?
- 金額の目安としては合いません。賃金構造基本統計調査による25〜29歳男性の所定内給与額は月27.47万円で[1]、3ヶ月分は約82万円。実際の婚約指輪の平均は首都圏43.2万円・全国推計39.0万円です[7]。2倍近い開きがあるので、この基準を満たせないことを気にする必要はありません。
- 婚約指輪は絶対に必要ですか?
- 必須ではありません。全国の調査で「婚約指輪をわたす/もらう」を実施した人は55.9%[2]、婚約記念品があった人は首都圏で73.4%[5]。指輪の代わりに旅行や時計など別の記念品を選ぶ人もいます。二人が納得していれば、なくても問題ありません。
- 結婚指輪だけ用意して、婚約指輪は省略してもいいですか?
- 珍しくありません。婚約指輪と結婚指輪は本来別の意味を持つもので、順番や有無を含めて二人で決めていい部分です。首都圏で挙式した人では結婚指輪はほぼ全員が購入していますが[10]、全国の既婚者で見ると結婚指輪も約14%は用意していません[3]。
- 婚約指輪を先に決めて、それに合わせて結婚指輪を選ぶべきですか?
- 決まりはありません。実際、結婚指輪の購入店が婚約指輪の購入店と同じだった人は首都圏で50.9%、違う店だった人が47.9%とほぼ半々です[17]。同じブランドで揃える人も、それぞれ好みで別々に選ぶ人も、どちらも一般的です。
- 指輪の予算は、結婚式全体の予算とは別に考えるべきですか?
- 決まりはありませんが、多くの人は結婚式費用とは別枠で考えています。二人の総予算のなかで指輪にどれだけ配分するかを先に決めておくと、他の費目との兼ね合いで慌てずに済みます。
出典
数字は公開された一次情報から。公的統計・法令の公的解説と、民間調査を区別しています。
- [1]令和6年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)結果の概況 第2表 性、年齢階級別賃金(一般労働者・所定内給与額)公的統計2024
- [2]結婚マーケット調査2025(リクルート ブライダル総研/2025年5月実施・2024年4月〜2025年3月に結婚した全国20〜49歳の男女821人)結婚を機としたイベントの実施率【既婚編】民間調査2025
- [3]結婚マーケット調査2025(リクルート ブライダル総研)結婚指輪の有無と手配方法【夫側】【妻側】民間調査2025
- [4]結婚マーケット調査2025(リクルート ブライダル総研)結婚指輪の費用【セット価格】(結婚指輪を用意した人のうち金額回答者・n=289)民間調査2025
- [5]ゼクシィ結婚トレンド調査2024 首都圏(リクルートブライダル総研)婚約記念品の有無民間調査2024
- [6]ゼクシィ結婚トレンド調査2024 首都圏(リクルートブライダル総研)婚約記念品の品物民間調査2024
- [7]ゼクシィ結婚トレンド調査2024 首都圏(リクルートブライダル総研)婚約指輪の購入金額民間調査2024
- [8]ゼクシィ結婚トレンド調査2024 首都圏(リクルートブライダル総研)婚約指輪の種類(オーダー・既製品)民間調査2024
- [9]ゼクシィ結婚トレンド調査2024 首都圏(リクルートブライダル総研)婚約指輪のスタイル民間調査2024
- [10]ゼクシィ結婚トレンド調査2024 首都圏(リクルートブライダル総研)結婚指輪の有無民間調査2024
- [11]ゼクシィ結婚トレンド調査2024 首都圏(リクルートブライダル総研)結婚指輪の種類(オーダー・既製品)民間調査2024
- [12]ゼクシィ結婚トレンド調査2024 首都圏(リクルートブライダル総研)結婚指輪(夫婦合計・夫・妻)の購入金額民間調査2024
- [13]ゼクシィ結婚トレンド調査2024 首都圏(リクルートブライダル総研)婚約指輪の決定者民間調査2024
- [14]ゼクシィ結婚トレンド調査2024 首都圏(リクルートブライダル総研)結婚指輪の決定者民間調査2024
- [15]ゼクシィ結婚トレンド調査2024 首都圏(リクルートブライダル総研)婚約指輪の検討店舗数・検討期間民間調査2024
- [16]ゼクシィ結婚トレンド調査2024 首都圏(リクルートブライダル総研)結婚指輪の検討期間民間調査2024
- [17]ゼクシィ結婚トレンド調査2024 首都圏(リクルートブライダル総研)結婚指輪の購入店が婚約指輪の購入店と同一だったか民間調査2024
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数字は、厚生労働省の人口動態統計などの公的統計と、公開された民間調査の一次情報に基づく目安です(各ページ末尾に出典を明記しています)。地域・会場・時期によって幅があるので、最後はふたりのペースで読み替えてください。